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クラウドおよびクラウドプラットフォーム領域における6つのトレンドー今後12か月と2020年代のフィンテック予測

新たなテクノロジーの導入に伴い、銀行および金融変革に引き続き影響がもたらされます。銀行や金融機関に日々携わるイントラリンクスのセールスエンジニアおよびコンサルタントは、フィンテックのトレンドは今後12か月およびそれ以上の期間にわたり、金融領域に影響を与えるだろうと予測しています。

Intralinks 6 Fintech Predictions for Data in the Cloud and Cloud Platforms in the Next 12 Months and New Decade

予測:CRMと投資家ポータルの統合がより強固なものに - ポール・ロフステッド、シニア・ソリューションコンサルタント

Paul Loefstedt

ポール・ロフステッド:効率性と正確性の改善に向け、ジェネラルパートナー(GP)およびファンドアドミニストレーターはCRMとファンドレポート及び資金調達用の相互作用システム(SOI)の統合を優先的に行う必要があります。二つのシステム内の投資家と投資選択先を手作業で追跡するプロセスは付加価値の低い作業に膨大な時間を割き、システム間に許容できないレベルの不統一性を生じさます。特にファンドレポートと資金調達システムは事業活動にとって極めて高い信頼性が求められるものです。レポートシステム上の投資家許可をCRMに手作業で同期させるのは手間がかかり付加価値が低いことから、自動化するのが理想的です。

システムのバージョンをAPIレベルに沿って確立することよりも、企業はCRMをマスターシステムに、SOIを更新オペレーションのターゲットとして利用することで、データ変換および取り込みに注力するようになるでしょう。またCRMによって自動作成された投資家の投資関係データをエクスポートする際も、資金調達またはファンドレポートポータルに必要な形式に変換できるほか、ポータル上の適切な項目の更新機能を備えたイベント駆動型のミドルウェアソリューションによって更新されます。このようなアプローチは開発がしやすく、メンテナンスが簡単な他、APIを直接統合するのに比べ、変化に強いものです。さらに、投資家と同期がしやすくなることで、レポートや資金調達のポータルから活動その他のインサイトを表面化させるといった、より深いレベルでの統合の土台作りをすることが可能となります。

 

予測:オルタナティブ投資はデジタル式データ交換を超え、人工知能へ - レカ・デパラ、シニアソリューションエンジニア

Rekha Depala

レカ・デパラ:デジタル変換により、計り知れない量の情報がGPとLPにもたらされました。しかし、どのようにしてLPはそれらを管理し、変換されたデータを活用するのでしょうか?競争の激しい中、データの少ない、簡単な四半期ごとのレポートのみを要求する投資家などはいません。

投資家はより積極的にデータを活用し、深く掘り下げていきます。新しい年代に入り、事実情報を投資家の意思決定に活用できるよう、より優れた、洗練された分析ツールが要求されるのはそのためです。さらにLPがアセットレベルから個人パートナーレベルに至るまでの高い価値をGPから調達することができるツールが必要です。そのためには、複数の細かいデータを統合するための、AIや自然言語処理(NLP)と言った技術が必要になります。LPが事実に基づいて機会を測定評価できるようになれば、より多くの投資家をオルタナティブ投資に導くことができます。そうした技術はいわゆるバンキングとリテールといった、別の金融サービス分野で成功しています。

LPのデータを先進的に利用することでプライベートマーケットにおける次のイノベーションと競争につながるでしょう。そして、すでに激しい競争と急速な進化を遂げているマーケット環境に与える影響も期待できそうです。

 

予測:ブロックチェーン:スピードの変化に対応する - ダレン・グレニスター、VP、セールス部門

Daren Glenister

ダレン・グレニスター:ブロックチェーンは3年前から銀行と金融業界を含む様々な業界を変革させるテクノロジーとして期待されてきました。しかし現実的には期待されたほどの変化は現れていません。運輸、サプライチェーン、テレコムといったいくつかの業界はすでに導入を始めたものの、銀行や金融は早期参入からは程遠い存在です。

多くの企業がブロックチェーンの導入を検討しているものの、インターネット・オブ・シングス(IoT)などその他のテクノロジーを導入することでブロックチェーンの本来の価値を生み出そうとしている企業もあります。ガートナーによると、アンケートの回答者のうち75%は2020年までにブロックチェーンを導入するか、あるいは導入を検討すると回答しています。

そのうち、導入を実施した多くの企業(86%)はIoTと併せて導入しています。もしIoTが導入のきっかけとなるのであれば、一部の業界はリーダーであり、その他は遅れた企業ということになります。例えばフェデックスやウォルマートはブロックチェーンを利用したサプライチェーンと支払いシステムの統合という点で先を行っています。

ブロックチェーンの採用を遅らせる大きな理由の一つには、業界基準と国際基準が欠如していることが挙げられます。ブロックチェーンの導入を加速させるためには、国レベルの基準もしくは銀行が国際的に合意された業界基準を導入することが不可欠です。すでに銀行業界ではその動きが見られています。もし銀行業界が基準設定できなかった場合、他の企業が試みることでしょう。Facebookはこのほど、支払いとカード取引に際してブロックチェーンの能力を導入する計画であることを発表しました。これは大きな変革のきっかけとなりかねません。私は2020年は銀行業界で基準が設けられることなく、銀行でない企業が常識を覆すような基準を生み出し、他が追従する年になるのではないかと予測しています。

新しい年代の開始と共に、2020年は銀行業界におけるブロックチェーンの画期的な年となるでしょう。しかしながら、銀行業界はそのシナリオを書く側ではないかもしれません。

 

予測:デジタルディスラプションが将来の銀行に影響を与える - アダム・プリーディー、マネージャー、セールスエンジニア、EMEA

Adam Preedy

アダム・プリーディー:2008年の金融危機以来、銀行はこれまで以上に機敏な対応が求められる一方、規制の増加、高い資本準備金が要求されるといった厳しい事業環境に立たされています。しかしさらに問題となるのは、銀行業界にとって潜在的に問題となる決済サービス指令(PSD2)とオープンバンキングです。こうした規制は、銀行業界が各自の顧客データを開放することを要求しています。まだ完全には規模が確立されていないものの、小規模のフィンテックやテックジャイアント、新規参入企業が既存の独占的なグローバル銀行に対抗するようになるのは時間の問題だともいわれています。

テクノロジーに長けた顧客はより柔軟性が高く、使いやすい、そして料金や企業の社会的責任といった分野に関して透明性の高いサービスを求めています。顧客は銀行に要求する内容を明確に理解しています。簡単に言えば、ビッグプレイヤーはデジタル移行を完全に取り込むことに失敗し、時代遅れのビジネスモデルに頼り切っているということです。このような銀行はディスラプションに弱く、行動しなかった場合、究極的に見当違いとなってしまいます。銀行を変えることは難しいという従来の見方が変化することで、顧客の惰性は急速に減少しています。

銀行はより革新的になりクラウドを十分に活用し、サービスを基本としたテクノロジーが違いを生むカギとなる新しい戦略に取り組む必要があるでしょう。これはテクノロジーとフィンテックが銀行業界に進出するにともない、今後さらに進みます。こうした企業は膨大なデータを素早く管理できる(また分析できる)知識があるうえ、AI&MLの処理能力は既存の大手銀行にとっては大きな脅威となります。そのためRBSが独自に立ち上げたデジタルバンクのBóといった例や、スタートアップ企業やフィンテックなどとジョイントベンチャーを設立する銀行も出始めています。従来の銀行はまた、顧客が他の銀行に移ることのないように関係強化に努めています。

最終的には勝者は顧客であり、それは体験とライフサイクルを重視した傾向が強まっているためです。銀行は常に人との関係が大切です。顧客との個別の関係をシームレスに、より優れたユーザー体験を提供することのできる企業は、将来の需要にこたえることができるでしょう。

 

予測:従来の金融サービス機関はXRに投資し、店頭とウェブの先を目指す - アユーシ・ベイシャ、ソリューションデザイナー

Ayush Bhatia

アユーシ・ベイシャ:エクステンデッド・リアリティ(XR)とは、拡張現実(AR)、仮想現実(VR)、複合現実(MR)の技術を総称したもので、2020年にはゲームやEコマース業界を超える技術がみられるでしょう。具体的な面白い事例としては、ARやVRを利用することで、リビングルームに銀行が登場することです。そして支払いや株の取引がしやすくなるほか、ホログラフィックワークステーションによるデータの視覚化が行われるようになります。

オープンバンキングが広まるにつれ、新たな規制、コンプライアンス、インフラ、データガバナンス、ポリシー、セーフガードの作成が早急に必要とされています。オープンバンキングでは、顧客は信頼できる第三者およびフィンテック企業に金融情報を共有することを可能にし、これらの企業はAPIを通じて管理されている銀行情報にアクセスすることになります。さらにデータを銀行以外に開放することで、新しい金融商品やサービスの誕生につながります。

2020年に導入される使用事例には、パーソナルファイナンスとビジネスファイナンス、消費者用の支払い、貸し出し、仲介といったサービスが挙げられるでしょう。私はオープンバンキングによるXRの収束が進むことで、画期的なソリューションが生み出されると確信しています。例えば、ARやVRのアプリを活用して、不動産を探すユーザーも現れるかもしれません。これはバーチャルツアーや事前承認が可能となるほか、オープンバンキングAPIを通じて異なる金融機関から取得した集計データを用いて、最も率の良い金利を探すことが可能になるでしょう。これは結果的に時間の短縮と新たな体験を促すことにつながります。

 

予測:テクノロジーに精通した銀行はLIBOR廃止に向け、EディスカバリーAIおよび学習検索を導入 - ドミニク・ブラウン、ディレクター、セールスエンジニアリング、北米

Dominic Brownドミニク・ブラウン:2021年12月のLIBOR廃止期限が近づいていることから、先を見越した銀行ではEディスカバリー*AIと2006年のEディスカバリーからの学習検索を導入することで、LIBORからの移行に備えるでしょう。多くのTBを備える初期Eディスカバリーデータセットはあまりに膨大過ぎて、AI(人工知能)ツールでの解析が不可能です。巨大な計算処理能力が必要となるため実用化ができないのです。そのため、通常はまずファーストパス・メタデータ検索を使いデータを削減します。このファーストパスの後でも、データセットはAIには大量すぎるため、従来の手法ーつまりワイルドカード、ブーリアン、プロキシミティ、正規表現ーを用いてAIを導入する以前にデータ量を削減します。LIBOR向けのデータセットそれほど大きくはないものの、ファーストパス・メタデータ検索により素早く非LIBORの契約を排除し、従来の検索手法も用いながら、また正規表現を使うことで満期日を特定するため、LIBORからの移行に向けてより効果的となります。プロセスの前段階においてより多くのデータが削除されていればいるほど、プロセス後半においてAIベンダーや法律家にかかるコストが少なくて済みます。これは膨大なコスト削減とLIBORからの移行の加速を意味します。その後、EディスカバリーとLIBORからの移行の両方に対して、AIが削減後のデータセットに登場します。ここでは法律家がサンプル書類を探し、AIツールに対して練習目的でそれらの書類を与えます。多くのケースでは法律家がAIの結果を評価し、次の訓練のためにそれらを精錬していきます。LIBORからの移行に際しては、一から作り直す必要はありません。単にEディスカバリーの学習をより効果的な移行に向けて適用するだけです。

* Eディスカバリーは法的訴訟に対応してESI(電子保存情報)の保存、収集、開示を行う手続き。連邦民事訴訟規則は民事および刑事訴訟の手続きを示したもので、2006年12月にESIを含むと改定された。